平成30年度農作物病害虫発生予察情報
発生予報
第1号(3~4月予報)
発表日:平成30年3月7日 岩手県病害虫防除所
Ⅰ 情報の要点 1 水 稲
◎苗立枯病と細菌病類は並の予報ですが、温度管理等の育苗期の基本技術を徹底しましょう。 2 りんご
◎腐らん病がやや多の予報です。発病や前年の病斑からの再進展は、3月頃から確認されるので、処理 済みの病斑、切り口癒傷部、摘果痕や採果痕などを注意して観察し、早期発見に努めましょう。 ◎モニリア病がやや多の予報です。子実体(キノコ)からの胞子飛散時期は年により変動するので、
今後の情報に注意してください。
◎リンゴハダニは並の予報ですが、剪定時に枝の分岐部等を注意して観察し、越冬卵が確認された園地 では、芽出前~発芽2週間後までにマシン油乳剤で防除を行いましょう。
Ⅱ 農薬の安全使用
1 農薬の使用にあたっては、他作物や周辺環境に影響が及ばないように十分配慮し、対策を講じましょ う。
2 水稲育苗ハウスで後作に野菜等を栽培する場合は、農薬が土壌に残留しないよう、箱施用剤の処理を ハウス外で行うか、ハウス内では無孔のビニールシートを使用するなどの対策をとりましょう。
【利用上の注意】
本資料は、平成 30 年2月末現在の農薬登録情報に基づいて作成しています。 ・農薬は、使用前に必ずラベルを確認し、使用者が責任を持って使用しましょう。
・農薬使用の際には、(1)使用基準の遵守(2)飛散防止(3)防除実績の記帳 を徹底しましょう。 【情報のお問い合わせは病害虫防除所まで】 TEL 0197(68)4427 FAX 0197(68)4316
Ⅲ 3ヶ月予報(3月~5月、仙台管区気象台、2月 23 日発表)
向こう3か月の出現の可能性が最も大きい天候と、特徴のある気温、降水量等の確率は以下のとおり です。
3月 東北太平洋側では、平年に比べ晴れの日が少ないでしょう。
4月 東北太平洋側では、天気は数日の周期で変わり、平年と同様に晴れの日が多いでしょう。 5月 高気圧と低気圧が交互に通り、天気は数日の周期で変わるでしょう。
稚 苗 中 苗 ・ 成 苗 緑 化 期 硬 化 期 出 芽 揃 い ~ 3 . 5 葉 3 . 5 ~ 4 葉
日 中 2 0 ~ 2 5 ℃ 2 0 ~ 2 5 ℃ 1 5 ~ 2 0 ℃ 水 温 2 5 ℃ 以 下 夜 間 1 5 ~ 2 0 ℃ 1 0 ~ 1 5 ℃ 5 ~ 1 0 ℃ 水 温 1 0 ℃ 以 上 プ ー ル 育 苗 水稲病害
1 予報(4月)の内容
病害虫名 発生時期
発生量 ・ 感染量
予 報 の 根 拠
苗立枯病
(リゾプス、トリコデル マ属菌)
(育苗期) 並 (1)化学合成農薬消毒済み種子が広域で使用される。(-) (2)4月の気温は、平年並か高い予報。(+)
苗立枯病
(フザリウム、ピシウム 属菌、ムレ苗)
(育苗期) 並 (1)薬剤防除の実施率が低い。(+)
(2)4月の気温は、平年並か高い予報。(-)
細菌病類 (もみ枯細菌病) (苗立枯細菌病)
(育苗期) 並 (1)4月の気温は、平年並か高い予報。(±)
ばか苗病 (育苗期) やや少 (1)前年の本田での発生は平年並。(±)
(2)化学合成農薬消毒済種子が広域で使用される。(- -)
いもち病 (育苗期) 並 (1)前年の穂いもちの発生量は平年並。(±)
(2)化学合成農薬消毒済種子が広域で使用される。 (-)
(3)4月の気温は、平年並か高い予報。(±)
記号の説明 (++):重要な多発要因、(+):多発要因、(±):並発要因、(-):少発要因、(- -):重要な少発要因
2 防除のポイント
【共通事項】
(1)種子更新は必ず行う。また、購入種子と自家産種子は同時に浸種しない。
(2)化学合成農薬による種子消毒では、低温により初期生育が遅れることがあるので、水温、育苗温度に注意 する。生物農薬(消毒済種子を含む)の場合は、処理方法や育苗管理に特に注意する。
(3)稲わら、もみ殻等は、いもち病・ばか苗病の伝染源になるので、作業室、育苗ハウス及びその周辺に置か ない。
(4)浸種 水温 12~15℃とし、10℃以下にしない。異なる薬剤で消毒した種子は、別々の容器で浸種する。 (5)催芽 水温は 30℃を超えない。循環式ハト胸催芽器を用いる場合は、催芽器内に入れた桶内で催芽する等、
種子のまわりの水を直接循環させないよう工夫する。
(6)出芽 加温出芽を基本とし、出芽温度は 30℃を厳守する。
(7)緑化~硬化期
ア 別表を参考に、適正な温度管理に努める。
イ 出芽時及び緑化期に 10℃以下の低温に遭
遇すると、生物農薬の効果が不安定になる。
このため、加温出芽を行うとともに、ハウス
内で緑化する場合には被覆資材等による保温に努める。
ウ プール育苗の場合は、置床の均平作業をしっかり行い、入水時期および水位に注意する。
【苗立枯病】
(1)育苗期間の低温(4℃以下)、培土の高 pH、浸種やかん水における川水や池水の使用は、ピシウム属菌に
よる発病を助長する。
(2)薬剤防除を行うことが望ましいが、できない場合は育苗用水の吟味や育苗施設の温度管理等を徹底する。
【細菌病類】
(1)育苗期間中(特に催芽・出芽時~硬化初期)の高温は発生を助長するので、適正な温度管理に努める。
(2)プール育苗は、細菌病類の発生を抑制する。
【ばか苗病】
(1)育苗中の発病苗(徒長苗)は抜き取り、本田に持ち込まない。
【いもち病】
(1)育苗箱では種もみが露出しないように覆土を十分に行う。
(2)葉いもちが早期に発生する地域や前年多発した地域では、育苗期に葉いもち防除(かん注処理)を実施するこ
とが望ましい。
りんご病害
1 予報(3~4月)の内容
病害虫名
発生 時期
発生量 ・ 感染量
予 報 の 根 拠
腐らん病 - やや多 (1)前年の巡回調査での発生園地率は、平年並であった。(±) (2)枝腐らんが増加傾向であり、伝染源は多いと予想される。(+)
モニリア病 - やや多
(平年少発生)
(1)前年の巡回調査では、一部の園地で発生が確認された。(+) (2)4月の降水量は、ほぼ平年並の予報。(±)
黒星病 - やや多
(平年少発生)
(1)前年の巡回調査では、一部の園地で発生が確認された。(+) (2)4月の気温は平年並か高い予報、降水量はほぼ平年並の予報。(±)
記号の説明 (++):重要な多発要因、(+):多発要因、(±):並発要因、(-):少発要因、(- -):重要な少発要因
2 防除のポイント 【腐らん病】
(1)発病や前年の病斑からの再進展は、3月頃から確認されるので、処理済みの病斑、切り口癒傷部、摘果痕 や採果痕などを注意して観察し、早期発見に努める(図1)。本病は、発生樹及びその隣接樹に次年度も発 生する傾向があるので、発病歴のある樹とその周辺も注意して観察する。
(2)わい性樹の胴腐らんでは、側枝基部の発病が多いので、この部分をよく観察する(図1)。
(3)胴腐らんは、病斑を見つけ次第、患部を残さず紡錘形に丁寧に削り取り、その上から本病に有効な薬剤を 塗布する(図2、3)。枝腐らんは、見つけ次第剪除する。
(4)削り取った病患部や剪除した枝は、園地内に残さないよう処分を徹底する。
(5)剪定の切り口、日焼け、凍寒害、枝折れなどの外傷部には、トップジンMペースト又はバッチレートを塗 布する。トップジンMオイルペーストは、外傷部のゆ合を阻害するので使用しない。
(6)芽出前にトップジンM水和剤、ベンレート水和剤、ベフラン液剤 25、または石灰硫黄合剤を散布する。で きるだけ動噴で散布し、薬液が幹にも十分付着するようにする。
【モニリア病】
(1)近年、モニリア病が発生した園地では、芽出当時(発芽5割頃)と芽出 10 日後に有効な薬剤を散布する。 胞子飛散開始期前の降雨前に防除を行うことが重要である。
(2)子実体(キノコ)からの胞子飛散時期(例年4月第3半旬頃~)は年により変動するので、防除速報を参 考とするなど今後の動向に注意し、防除時期が遅れないようにする。
(3)葉・花ぐされの発生が見られたら、見つけ次第摘み取り、処分する。
(4)雪融けの遅れ等、園地が湿っていると子実体の生育にとって好条件となる。常発園では、消雪促進、排水 対策、除草、落葉処分などを励行し、園地が早く乾くよう努める。
【黒星病】
(1)前年に発生が見られた園地では、被害落葉を芽出前に処分すると共に、重点防除時期である開花直前にE BI剤を散布する。EBI剤は、降雨前または降雨直後の散布で効果が高い。
側枝基部病斑 側枝切口ゆ傷組織部 前年発病部再進展
図1 わい性樹における主な胴腐らんの発病部位
図2 腐らん病の処置(通常の方法) ① 病斑を確認
② 病患部を残さず、健全な部分
も含めて紡錘状に削り取る
表皮は木部と垂直に削り取ると、カルス
ができやすく、傷口のゆ合が早い
③ 殺菌剤を塗布する 4~5cm 健全部
図3 腐らん病の処置(省力的な方法)
トップジンMオイルペーストは浸透性が強いので削り取りの作業時間を 3~4割短縮できる。
※トップジンMオイルペーストは、胴腐らんの処置にのみ利用する
③ トップジンMオイルペーストを
塗布する ② 病患部を 削り 取り 、 周
辺の表皮を薄くはぎ取る
り ん ご 害虫
1 予報(3~4月)の内容
病害虫名 発生時期
発生量
・
感染量
予 報 の 根 拠
ハマキムシ類 やや早 並 (1)4月の気温は、平年並か高い予報。
(2)前年秋期の発生園地率は、例年並に低かった。(±)
リンゴハダニ 越冬卵
ふ化時期
やや早
並 (1)4月の気温は、平年並か高い予報。
(2)前年8月後半の発生園地率は、平年並であった。(±)
キンモン
ホソガ
越冬世代
羽化時期
やや早
やや少 (1)4月の気温は、平年並か高い予報。
(2)前年秋期(第4世代)の発生園地率は、平年より低かった。(-)
記号の説明 (++):重要な多発要因、(+):多発要因、(±):並発要因、(-):少発要因、(- -):重要な少発要因
2 防除のポイント
【ハマキムシ類・リンゴクビレアブラムシ】
(1)展葉期の防除薬剤は、有機リン剤を使用する。
【リンゴハダニ】
(1)剪定時などに枝の分岐部等を注意して観察し、越冬卵が確認された園地では、芽出前~発芽2週間後まで
にマシン油乳剤で防除を行う。特に、近年発生の多い園地では、芽出前~芽出当時の防除に努める。
(2)マシン油乳剤を散布する場合は、ムラのないよう風の弱い日にゆっくり丁寧に十分量を散布する。
【キンモンホソガ】
(1)越冬は被害落葉の中で行われるので、前年秋期に多発した園地では、羽化前(りんごの芽出前)までに園
地内の清掃に努める。